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高森明勅
2024.3.28 07:12皇統問題

皇位継承問題のスケジュール感、6月決着の可能性が高い

3月22日、天皇·皇后両陛下におかれては、能登半島地震の
被災者を見舞われる為に、石川県を訪れられた。
両陛下をお迎えした現地の人々の声をテレビニュースなどで
聴くと、改めて皇室の有り難さを実感する。

又同26日から27日にかけて、敬宮殿下は伊勢の神宮と
橿原市にある畝傍山東北陵(神武天皇陵)を参拝された。
特に、皇女として天照大神にお仕えした「斎王」の歴史を
顧みられる為に、わざわざ「斎宮歴史博物館」と
「いつきのみや歴史体験館」にも訪れられた事実から、
令和におけるただお一方だけの「皇女」として、皇室に
お尽くし下さるご覚悟を拝察できる。

お迎えした人達の感激の声も報じられ、深く共感した。
報道に対するネット上の反応などを覗くと、愛子皇太子→天皇への
期待感がより高まっているのを感じる。

しかし、政治の現場の実情はどうか。

私は昨年12月の時点から、皇位継承問題が一応の決着を見るのは
今年の前半、通常国会においてだろうという見通しを示して来た。
3月19日発売の「女性自身」(4月2日号)に載ったコメントでも、
小泉純一郎内閣以来、ほぼ20年ぶりに決着に向けて動き始めた
政治のスケジュール感について、以下のような見通しを述べた。

「すでに立憲民主党は論点整理を終えており、各党も3月中を
めどに論点の取りまとめを終えます。
4〜5月には各政党各会派の意見が調整され、6月23日まで開かれる
予定の通常国会の会期中に決着すると思われます」と。

事態は今のところ、ほぼここで述べたスケジュール感で
進んでいるように見える。
問題は決着の「中身」だ。

私は以前のブログ(2月5日公開)で、最善から最悪まで5つの選択肢を提示した。
その上でどのように決着するかについて、少し厳しいがリアルな
見通しを述べておいた。

「現在の政治状況での実現可能性を考えると、
率直に言って①についてはほぼ絶望的である一方、
⑤がそのまま制度化される公算はかなり大きい。
そこで、それをいかに④→③→②の選択肢へと押し上げるかが
国民的な努力目標になる。

②に到達できれば愛子皇太子→天皇への道が開ける。
逆に言えば、③以下にとどまれば、その道は差し当たり
閉ざされる結果に終わる」と。

皇位継承問題について立法府の総意を取りまとめる際に、
唯一無二の正解である選択肢①の「女性天皇·女系天皇」を唱える政党は、
皮肉ながら元々「天皇制打倒」を掲げていた共産党だけ。
しかしこの問題について、同党の熱意や影響力をほとんど
期待できないことは、上皇陛下のご譲位を巡る経緯からも明らかだろう。

そうすると、立憲民主党が選択肢④の「女性宮家」を挙げているのを除き、
他の主な政党は全て⑤で足並みを揃えることになるだろう。
立憲民主党の中にさえ⑤にすり寄ろうとする者らが、
少数ながら頑固に存在している。

しかし⑤で決着した場合、その後の反転攻勢が極めて困難になりかねない。
ただでさえ、一旦政治の場で中途半端なレベルにすら達しない形であっても、
差し当たり決着を見てしまうと、事態が再び動き出すのはいつかが、
極めて不透明になる。

その上、⑤で決着すると、例えば敬宮殿下がめでたく結婚された場合、
その配偶者やお子様は国民とされる。
そうした状況が生まれると、女性天皇を可能とする制度改正への
ハードルは、より高くなる可能性がある。

皇族と国民が1つの世帯を営むという⑤は、普通の感覚があれば
思い付くことすら無いような、非常識極まるプランだ。
安定的な皇位継承と無縁なばかりか、皇室の「聖域」性や
厳格であるべき皇室と国民の区別を、決定的に損ないかねない。
しかし目を逸らさずに今の局面を直視すれば、それがそのまま
制度化される現実味が増しているのが実情だ。

客観的·普遍的な妥当性、皇室ご自身のお考え、
圧倒的多数の国民の願いは、見事に一致している。
にも拘らず、それと永田町の「空気」との隔絶ぶりに、
目が眩みそうだ。

4月以降、立法府の総意の取りまとめが本格化するはずで、
6月までが差し当たり“最後の決戦”となろう。
厳しい局面ながら、国民として後悔しない取り組みに力を注ぎ、
僅かでも次の前進に繋がる成果を残したい。

▶参考ブログ
https://www.a-takamori.com/post/240205

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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